酢語録BLOG 2.0

それでもやっぱり言いたい放題

ミャクミャクと単純接触効果──“慣れ”が人生を変える力

大阪・関西万博が閉幕した。終わってみれば、会場を彩った赤と青の不思議なキャラクター「ミャクミャク」は、まさにこのイベントの象徴となった。思い返せば、初めてその姿を目にしたときの衝撃はいまも鮮明に覚えている。どこか不気味で、奇妙な造形。正直、お世辞にも「かわいい」とは言い難い印象だった。SNS上でも、「怖い」「何をモチーフにしているのかわからない」など、当初は賛否どころか否の声が圧倒的だったように思う。

 

ところが、いざ万博が始まると、その評価は一変した。会場のグッズ売り場ではミャクミャクがプリントされた商品が飛ぶように売れ、子どもたちはその名前を自然に口にし、記念撮影には行列ができた。あの異形のキャラクターが、いつの間にか「かわいい」と言われる存在になっていたのである。

 

この現象について、心理学の専門家は「単純接触効果」によるものだと説明している。繰り返し目にすることで、最初は違和感を覚えた対象にも親近感が湧き、次第に好ましく感じるようになるというものだ。なるほど、確かにテレビやSNS、広告などで毎日のようにミャクミャクを見ているうちに、いつの間にか「まあ、悪くないか」と思うようになった。人の感情とは、案外そんなふうに変化していくのかもしれない。

 

思えば、単純接触効果はキャラクターだけの話ではない。人生においても、この法則は意外なほど応用が利く。たとえば、最初は気が進まなかった仕事や、苦手だと思っていた人との関係も、日々の小さな接点を重ねるうちに、いつの間にか受け入れられるようになることがある。興味がなかった分野でも、少しずつ触れていくうちに、自分でも驚くほど関心が湧いてくる。大切なのは、最初の違和感で距離を置かないことだ。

 

「慣れる」ということは、決して鈍感になることではない。むしろ、自分の中の抵抗をやわらげ、新しい世界を受け入れる力でもある。ミャクミャクを「かわいい」と思えるようになった私たちは、知らぬ間に、変化を受け入れる柔軟さを手に入れていたのかもしれない。

 

完璧ではないもの、最初は理解できなかったものに、少しずつ心を開いていく。そうした積み重ねこそが、人生を豊かにする接触効果なのだと思う。万博が終わっても、あの赤と青の姿は、私たちの中で脈々と生き続け、何か新しいものを受け入れる勇気を教えてくれている気がする。