酢語録BLOG 2.0

それでもやっぱり言いたい放題

パーセントとパーミル、その使い分け

日常生活の中でよく目にする「%(パーセント)」と、やや馴染みの薄い「‰(パーミル)」。どちらも割合を表す単位であるが、基準となる分母が異なる。パーセントは「百分率」、つまり全体を100としたときの割合である。一方でパーミルは「千分率」、全体を1000としたときの割合を意味する。1%=10‰という関係であり、数字の桁を変換することで簡単に行き来できる。

 

この違いが実務上に現れる例のひとつが、2022年度診療報酬改定における「紹介率・逆紹介率」の見直しである。従来は「紹介率=(紹介患者数+救急患者数)÷初診患者数」、「逆紹介率=逆紹介患者数÷初診患者数」とされていた。いずれも分母が初診患者数であったため、分母が比較的少ない小規模医療機関では数値が大きく振れる傾向があった。

 

これに対し、改定後は「紹介割合(%)=(紹介患者数+救急患者数)÷初診患者数×100」、「逆紹介割合(‰)=逆紹介患者数÷(初診患者数+再診患者数)×1000」とされた。ここで注目すべきは、紹介割合にはパーセントが、逆紹介割合にはパーミルが採用されている点である。なぜ単位が分けられたのか。それは値の大きさに由来する。紹介割合は一定以上の規模の病院であれば数十%に達するのに対し、逆紹介の割合は母数が大きくなる分、数値としては数‰といった小さな値で示される。このため、%で表すと「0.3%」「0.8%」と小数点が並び、直感的に把握しにくくなる。そこで‰を用いることで「3‰」「8‰」と表記でき、桁数の感覚が揃うのである。

 

医療データサイエンスの観点から見ると、この変更は単なる表記の違いではなく、データの解釈に直結する。割合の定義や単位が変わることで、過去の実績値との比較を行う際に注意が必要になる。特に逆紹介に関しては、分母が初診から「初診+再診」へと広がっているため、同じ施設であっても数値の傾向が大きく変わり得る。制度設計上、患者の流れをより正確に把握しようとする意図があるのだろうが、モニタリングに携わる現場では、単位の違いを理解していなければ誤解や誤算を招きかねない。

 

パーセントとパーミルは、数学的には単なる倍率の違いにすぎない。しかし、医療の現場で指標として活用する際には「どの分母で測るのか」「どの単位で表すのか」という点が重要である。単位の選択は、数値の可読性や政策の意図を反映するものであり、単に換算すればよい話ではない。私たちがデータを扱うとき、その背後にあるロジックや制度的背景を読み解くことこそが、医療データサイエンスの実践にほかならない。