酢語録BLOG 2.0

それでもやっぱり言いたい放題

出口のない楽しさ──ゲーム実況『8番出口』体験記

ゲーム「8番出口」が映画化される──その報せに触れたとき、思わず小さく「まじか」と呟いてしまった。タイトルは以前から耳にしていたし、SNSでも“異変が怖い”とか“地下通路を出られない”とか、どこか謎めいた言葉とともに取り上げられていた。しかし、正直に言えば、私はこのゲームをまだ自分で体験していなかった。せめて概要くらいは知っておこうと、YouTubeで実況動画を再生したのが、すべての始まりだった。

 


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一言で言えば、「想像していたのと全然違う」。ホラーゲームと聞いて身構えていた私を待っていたのは、悲鳴や驚かしとは無縁の、静かな地下通路。そして実況者のやけにテンションの高い声だった。「あ、これ異変じゃない?」「さっきより看板の位置変わってない?」と、まるで友人と一緒にテレビの間違い探しでもしているかのような軽妙なやりとり。そのテンポと語り口にすっかり引き込まれてしまった。

 

ゲームの舞台はただひたすらに無機質な地下通路。それなのに、見れば見るほど違和感が浮き彫りになる。非常口の矢印の向き、掲示板の数、壁の落書き、聞こえてくる足音の間隔──どれも小さな違いでありながら、確実に“異常”である。実況者がその違和感に気づいて「戻ろう」と判断した瞬間、まるで自分までゲームの中にいるかのような没入感が生まれる。そして、また振り出しに戻る。だが、通路は同じようでいて、やはりどこかが違う。

 

そんな“異変探し”に夢中になっているうちに、恐怖心はどこかへ消え去り、代わりに湧き上がってきたのは純粋な好奇心だった。「次はどんな異変がくるのか?」「これは前と同じ?違う?」「気づけなかったらどうなるんだろう?」──気づけば自分も実況者と一緒に異変を探し、答え合わせをしていた。

 

そして、気がついたときには4連休の初日が終わっていた。外はすっかり暗くなり、予定していた読書も散歩も手つかずのまま、私はYouTubeという名の地下通路をぐるぐると彷徨っていたわけである。

 

このゲームはただのホラーではない。「感覚を研ぎ澄ませ」「微細な違和感を見逃すな」と、我々の観察力を試してくる。そして、その“気づく快感”こそが、このゲームの中毒性の正体だ。映画化されるならば、果たしてその微細な異変たちを、どれだけ映像として再現できるのか。ゲームのように「気づいた人だけが進める」世界観をどう物語に落とし込むのか。そうした点も含めて、大いに期待している。

 

もはやホラーというジャンルを越えて、「日常に潜む違和感」というテーマで観客の心をじわじわと侵してくる映画になるのではないか──そんな予感すらしている。
もしかすると、現実の通勤路にも“異変”は潜んでいるのかもしれない。そう思わせるだけの余韻が、たしかにあの実況動画にはあった。

 

 

 


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