人と人との関係において、すれ違いは避けがたい。とりわけ、それが「認識の違い」から生まれるものであれば、なおさら厄介である。同じ出来事を目の前にしても、受け止め方は人それぞれであり、背景や価値観、経験が異なれば、そこにズレが生じるのは当然のことだ。
「そんなつもりではなかったのに」と思うことがある。だが、相手にしてみれば「そう受け取るしかなかった」という事情もある。言葉は交わされたとしても、心の奥までは見えない。つまり、すれ違いとは単なる誤解ではなく、互いの“前提の違い”が表に現れた結果なのである。
では、そうした場面に出会ったとき、どうすればよいのか。まず大切なのは、「自分は正しい」という思い込みを一度手放すことである。相手の言動に違和感を覚えたときほど、「なぜそう感じたのか」「なぜ相手はそう言ったのか」を冷静にたどってみる。感情の波に流されず、少し引いて眺めてみると、見えてくるものがある。
そして、勇気をもって言葉を交わすことだ。誤解や思い違いを解くには、沈黙では足りない。言葉にしなければ、相手の誤解はそのまま固定されてしまう。こちらの意図も、相手の意図も、確認するまでは分からない。認識の違いが明らかになることは、決して悪いことではない。むしろ、それをきっかけに対話が深まり、お互いの理解が進むことすらある。
しかし、職場という環境では、それでもなお「埋まらない認識の違い」が残ることがある。すべての認識のズレを解消しようとすれば、かえって時間も労力も浪費されてしまう。ときには「あえて放置する」という判断も必要だ。違いは違いとして受け止め、業務に支障がない範囲で一定の距離を保つ。それもまた、組織で働く上での成熟した対応の一つである。
ただし、放置とは逃避ではない。互いの違いを尊重したうえで、衝突を避け、業務を前進させるための「戦略的距離感」である。認識を一致させる努力は大切だが、すべてを同じにすることがゴールではない。違いの中でも、機能的に協働できるラインを見定めることの方が、現実的かつ建設的である。
すれ違いは、避けるべきものではなく、向き合い方を選ぶべきものなのだ。話し合うか、受け流すか、割り切るか。その判断こそが、職場での人間関係を支える知恵である。
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