酢語録BLOG 2.0

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AドライブとBドライブに見る、パソコンの記憶装置の歴史

パソコンに当たり前のように存在する「Cドライブ」。しかし、その前には「Aドライブ」「Bドライブ」と呼ばれる場所があった。今ではあまり使われることがないが、そこにはパソコンの歴史と、技術の進化が静かに刻まれている。

 

パソコンの歴史

 

AドライブとBドライブの違いは、とても単純である。最初に認識されるフロッピーディスクドライブがAドライブ、2番目に認識されるものがBドライブ。つまり、違いは「順番」だけであった。役割に大きな違いはなく、2台目を接続して使うかどうか、それだけの違いであった。

 

この背景には、初期のパソコンにおける記憶装置の使い方がある。1980年代、パソコンにはまずフロッピーディスクドライブが搭載されており、データ保存やプログラムの実行はすべてフロッピーディスクに依存していた。MS-DOSなど当時のオペレーティングシステムでは、最初に認識されたフロッピードライブをAドライブ、次に認識されたものをBドライブとし、ハードディスクドライブはCドライブ以降に割り当てるというルールが決められていた。

 

フロッピーディスクドライブが1台しかない場合、ユーザーはソフトウェアを動かすためのディスクと、データ保存用のディスクを頻繁に入れ替えなければならなかった。しかし、2台のドライブがあれば、その手間を省くことができた。Aドライブにプログラムディスク、Bドライブにデータディスクを入れておくことで、作業の効率が格段に向上したのである。

 

データサイエンスの視点から見ても、この仕組みはとても興味深い。データへのアクセスには常に「コスト」がかかる。人はそのコストを減らすために工夫を凝らしてきた。現在、クラウドコンピューティングにおいてデータのコピー(レプリカ)を用意し、読み取り速度を高めているのと同じ発想である。物理的なドライブを複数用意するという発想は、今でいうデータアクセス最適化の原点とも言える。

 

時代が進み、フロッピーディスクはやがて姿を消した。今ではハードディスクやSSDが主流となり、AドライブやBドライブは事実上使われなくなった。しかし、ドライブレターの割り当てルールは変わらず、AとBは空席のまま、現在もCドライブから始まっている。

 

技術はめまぐるしく進化する。記憶装置は目に見えるものからクラウドへと移り、データはいつでもどこでも使えるようになった。しかし、どれほど環境が変わっても、「データに素早く、便利にアクセスしたい」という人間の本質的な欲求は変わらない。AドライブとBドライブの小さな違いは、そんな変わらぬ本質を今も静かに伝えているのである。