酢語録BLOG 2.0

それでもやっぱり言いたい放題

心を旅へ誘う声――30年越しの『ジェットストリーム』

仕事で動画のナレーションを担当することになり、ふと思い出したのが、城達也さんである。私が学生時代、ラジオからよく耳にした声だ。六畳一間の下宿で、疲れた体を横たえ、何気なくつけたラジオから流れてきた彼の声は、静かに、しかし確かに、心に沁みた。

ジェットストリーム

ジェットストリーム
この深夜のFMラジオ番組は、飛行機の機長に扮したナレーターが、世界各地の風景や文化を紹介する構成であった。夜の静寂に溶け込むような音楽とともに、城達也さんが語りかける。「遠い地平線が消えて、深々とした夜の闇に心を休める時……」。冒頭のこのフレーズを耳にするたびに、現実の喧騒から解き放たれ、遠く異国の空へと心が旅立つような感覚を覚えた。

 

パソコンも、スマートフォンも、携帯電話すらなかったあの時代、ラジオは若者たちにとって大切な窓口であり、夜を共に過ごす友であった。


アルバイトでくたくたになった帰り道、小さなスーパーで買ったインスタント食品を手早く済ませ、布団に体を投げ出してラジオのスイッチを入れる。そこに広がるのは、六畳一間の狭さを忘れさせるような、広大な空と遠い異国の街並みだった。現実を少しだけ忘れ、明日への小さな希望を胸に眠りにつく。そんな夜を、城達也さんの声は何度も支えてくれた。

 

あれから三十年の月日が流れた。
時代は大きく変わり、スマートフォンひとつで世界中の音楽も映像も手に入るようになった。情報の洪水の中で、私たちはいつでもどこへでも行けるはずなのに、ふと寂しさを感じることがある。


そんなとき、YouTube城達也さんの声に再び触れることができるのは、ありがたいことである。画面の向こうから聞こえるあの静かな語りかけに耳を澄ますと、自然と心が静まり、あの頃の自分にそっと戻っていく。

 

六畳の下宿、窓の外ににじむ街灯の明かり、カーテン越しに聞こえる遠くの車の音。そして、疲れた体を包み込むように響く城達也さんの声。
何もかもが懐かしく、そして今なお、かけがえのないものとして、私の中に静かに息づいているのである。

 


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