酢語録BLOG 2.0

それでもやっぱり言いたい放題

春の扉が開くとき――入学式に寄せて

4月は入学式のシーズンである。桜が咲き誇るなか、新しい制服やスーツに身を包んだ若者たちの姿が街にあふれ、春の光景にひときわの初々しさを添えている。真新しい鞄、少し大きめのジャケット、まだ履き慣れない靴。それぞれが期待と緊張の入り混じった面持ちで、まるでこれから始まる新しい人生を静かに歓迎しているようだ。

 

入学式は単なるセレモニーではない。人生の節目を象徴する、大切な通過儀礼である。これまでの努力や準備が一つの形として結実し、そしてこれから始まる新たな挑戦へと続いていく。本人にとっても、またそれを見守ってきた家族や周囲の人々にとっても、この日は特別な意味を持つ。新たな環境、新たな人間関係、新たなルールや価値観のなかに自分を投げ出すその一歩目に、祝福とエールが送られる。

 

入学式というものは、何度経験しても、その都度、新鮮な感情がわき上がる。会場に響く校歌、厳かな空気のなかでの式辞、そして新たな仲間との出会い。そうした一つひとつの要素が、私たちに「始まりの瞬間」の尊さを思い出させてくれる。入学式の日に交わした何気ない会話や、配られた資料の文字、座った席の位置までもが、後に記憶のなかで大切な一場面として残っていくのだ。

 

4月という季節は、新たな出会いとともに、いくばくかの別れも含んでいる。卒業を経ての入学は、一つの世界を離れ、また新しい世界に足を踏み入れることを意味する。そこには当然、期待だけでなく不安もある。「やっていけるだろうか」「友達はできるだろうか」「自分に合っているだろうか」――そんな問いが、誰の心にも密かに浮かぶ。だが、そうした問いこそが、人が成長しようとしている証なのだと思う。

 

そして、入学式は「初心」に立ち返る好機でもある。新入生だけでなく、私たち大人にとっても、何かを始める勇気や決意を思い出させてくれる瞬間である。人生は何度でも始めることができる。そう思わせてくれるのが、この春という季節なのだ。

 

桜の花びらが風に舞うたびに、人は立ち止まり、少しだけ空を見上げる。そして、自分自身の歩みを省みたり、これからのことを静かに考えたりする。入学式を迎える若者たちの姿を見ながら、そんな春の営みに改めて心が動かされる。今年もまた、誰かの物語がここから始まる。願わくば、それぞれの歩みが豊かで実りあるものであるように。春の陽光のなかで、私はそっとそう祈っている。

 

 

春待つ僕ら

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  • 土屋太鳳
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