「期待しないほうが楽だ」とよく言われる。確かに、誰かに期待して裏切られると、がっかりするし、腹も立つ。相手が自分の期待通りに動いてくれないことにイライラしたり、「なんでわかってくれないんだろう」と悲しくなったりする。そういう経験を重ねるうちに、「もう誰にも期待しない」と心に決めることもあるかもしれない。
でも、本当に期待をゼロにできるのだろうか? そもそも、人は誰かと関わる以上、少なからず相手に期待してしまう生き物だ。家族や友人、職場の同僚、恋人……。関係性が深いほど、「きっとこうしてくれるだろう」「こう思ってくれるはずだ」と自然に期待してしまう。だからこそ、その期待が裏切られたときのダメージは大きい。「こんなはずじゃなかったのに」と落ち込んだり、「どうしてわかってくれないんだ」と怒ったりする。
アドラー心理学では、「他人は変えられない」と言う。つまり、どんなに相手に期待しても、その通りにはならない可能性が高い、ということだ。人はそれぞれ自分の価値観や考え方を持っていて、自分の思い通りに動いてくれるわけではない。
例えば、仕事で後輩に「これぐらいはやっておいてくれるだろう」と思っていたのに、全然できていなかったとする。こちらからすれば「普通に考えたらわかるよね?」と思うことでも、相手には相手の事情や考えがある。恋人やパートナーに対しても同じで、「私がこんなに気を使っているんだから、向こうも察してくれるはず」と思っていたのに、まったく気づかれずモヤモヤ……なんてこともよくある話だ。
では、どうすればいいのか。結局、相手を変えようとするのではなく、自分の考え方を変えるしかない。相手に期待して裏切られたと感じるより、「そもそも期待しすぎていたのかも」と考えられたほうが、精神的なダメージは少なくて済む。
「こうあるべきだ」「こうしてほしい」と思うのは自然なことだけれど、それに縛られすぎるとしんどくなる。期待が大きいほど、相手の言動が期待通りでなかったときにイライラしたり、悲しくなったりする。でも、「こうしてくれたら嬉しいけど、そうでなくてもいい」と思えるようになれば、ストレスも減る。
友人にLINEを送ったのに返信がなかなか来ないとき、「普通すぐ返信するでしょ」と思っていると、待っている時間がイライラの時間になってしまう。でも、「忙しいのかもしれないし、そのうち返信が来ればいいか」と思えたら、気にする必要もなくなる。
期待をしない、というのは冷めた考え方ではなく、自分の心を守るための方法だ。人に振り回されるより、自分の機嫌を自分でとれるようになったほうが、よほど健やかに生きられる。もちろん、まったく期待しないというのは難しいし、期待したくなることもあるだろう。でも、その期待が裏切られたときに「まあ、そんなもんか」と受け流せるようになれたら、きっともっと生きやすくなるはずだ。
結局のところ、人生は自分の考え方次第なのだ。

