日本選手として初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたイチローさん。注目の得票率は99.7%。わずか1票足りず、満票選出はならなかった。そのことについて会見の中でイチローさんはこう言っている。
「1票足りないというのはすごくよかったと思います」
「足りないものを、これって補いようがないんですけど、努力とかそういうことじゃないからね。ですけど、いろいろなことが足りない、人って。それを自分なりに自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思うんですよね」
「やっぱり不完全であるというのはいいなと。生きていくうえで不完全だから進もうとできるわけで。そういうことを改めて考えさせられるというか、見つめ合えるというか、そこに向き合えるのはよかったなと思います」
人は完璧を目指すが、完璧にはなれない。だからこそ、不完全さを楽しむべきだという彼のメッセージは、単なるポジティブシンキングではない。努力や執念ではどうにもならないことを受け入れ、そこに価値を見出すのが彼の流儀だ。確かに、1票足りなかったことは事実だが、その事実の受け止め方が全く違う。足りないことを嘆くのではなく、それを生きる動機に変える。それが「自分なりの完璧」を追い求める姿勢につながる。
この考え方は、野球だけでなく、どんな分野にも当てはまる。仕事、恋愛、子育て、趣味。どれも完璧を求めたくなるが、そんな完璧な瞬間はそうそう訪れない。不完全だからこそ、今日も頑張る理由が生まれる。不完全だからこそ、何かを目指す意味が生まれる。彼の言葉を借りれば、不完全さが人生を「進むべきもの」に変えてくれるのだ。
彼が「足りないものを補いようがない」と言ったとき、それは私たちにとっての救いでもある。何かが足りないことを埋めるために頑張りすぎる必要もないし、埋められないことに苛立つ必要もない。ただその不完全さを受け入れ、それでも前に進む。この感覚が、彼の哲学の本質だろう。
99.7%という得票率は誰もが称賛する数字だが、彼の目には、わずかに欠けた0.3%こそが美しく映ったのだろう。そこには、人生の真実が隠れている。不完全さの中にこそ、完璧な価値が宿る。それは簡単には理解できないし、受け入れるのも難しい。しかし、その境地にたどり着いたとき、人は新たな世界を見つけられるのだ。
彼の言葉を胸に、私も不完全さと向き合いたい。何かが足りないことで悩む日々があっても、それが人生を豊かにしている。むしろ、不完全であることにこそ感謝すべきかもしれない。彼は、そんな人生論を1票足りない現実から教えてくれたのだ。
