数字を見て「Aの方が高い」「Bの方が良さそう」と感じることはよくある。だが、その違いが本当に意味のあるものなのか、ただの偶然なのか――それを判断するのが統計の役割である。その中でも、データサイエンスの基本にして王道の方法が「一元配置分散分析(One-Way ANOVA)」だ。
名前は少し堅苦しいが、やっていることは意外にシンプルだ。たとえば、三つのクラスで同じテストを受けたとする。平均点に違いがあるように見えても、それが「先生の教え方の違い」によるのか、「たまたま生徒の出来が良かっただけ」なのかは分からない。そこで一元配置分散分析では、データのばらつきを使ってその違いを見極める。もしクラス間の違いが、クラス内の個人差よりもずっと大きければ、「平均点に有意な差がある」と判断できるのだ。
要するに、これは「グループ間の違いが偶然ではなさそうか」を確かめる方法である。数学的にはF値という指標を使い、コンピュータがあっという間に計算してくれる。研究者でなくても、今ではExcelでも簡単にできる分析である。
この考え方は、日常のいろいろな場面に応用できる。たとえば、三種類の広告を出して、どれが一番クリックされやすいかを比べたいとき。あるいは、複数の病院で平均入院日数に差があるかを知りたいとき。いずれも、「三つ以上のグループの平均を比べる」ときに使える。二つのグループだけならt検定、三つ以上なら一元配置分散分析、と覚えておくとよい。
データサイエンスの視点で見ると、この分析は「ばらつきをどう説明するか」を考える練習でもある。数値の違いは、いつも何かの要因によって生じている。その要因を見つけることが、問題解決や意思決定の出発点になる。たとえば売上データを見て、店舗ごとに差があるなら、それは立地のせいか、スタッフの対応か、あるいは曜日の違いかもしれない。分散分析の考え方を身につけると、データの裏にある構造を読み解く目が育ってくる。
データサイエンスは難しい数式の世界ではなく、「違いの理由を探す科学」と言っていい。数字の背後には、必ず人の行動や状況がある。だからこそ、一元配置分散分析は、研究者だけでなく、仕事や生活の中でデータを扱うすべての人にとって役立つ道具なのである。
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